夏!夏!夏!

オトモアイルー(モンスターハンター)イルミ(ハンターハンター)竜・雨宮・北乃(哭きの竜)
※ 相手選択で飛びます。


▼ オトモアイルー(ハンターハンター)

カンカンと照りつける日々が続き、ハンター達の疲労は誰が見ても明らかだった。
そんな中、一人顔色を変えずにクエスト受注ボードを見ているのが生態調査班に属するだった。

「うーん。この時期っていっつも旧砂漠での調査が多いんですよねぇ」

貼られたクエストを見ながら「暑いんですけど、仕方ない事なんですかね?」とオトモアイルーに話しかける。
焼けるような日差しに目を細めながら「ご主人様は、相変わらずいつも通りですにゃ」と舌をペロリと出した。
そんなオトモアイルーには笑いながら「私だって暑いですよ」と言う。

「そろそろ暑い日々の任務が来ると思って新しい装備を作っておいたんですよ」
「い、いつのまに……」
「日々の調査でコツコツ素材を集めていたので」

ニコっと笑うは「これにしましょう」と一枚のクエスト依頼書に手を伸ばした。

「早速おニューの装備に着替えましょう」
「わ、分かりましたにゃ」

スキップでマイハウスへと向かう主人にオトモアイルーはおぼつかない足取りでその背中を追いかけた。

*****

「ふふーん。やっと着られるんですね」

鼻歌交じりでクローゼットの中を漁るをみながらオトモアイルーは椅子に座ってオレンジジュースを飲んでいた。
滅多に装備を変えないの楽しそうな姿を見ながら一体どんな新しい装備を新調したのか気になり、「何のモンスターですにゃ?」と聞くが「着替えてからのお楽しみです」と言われてしまった。
ある一式装備を胸に抱えて「では着替えてきますね」とオトモアイルーに伝えては脱衣所へと向かった。
数分後、脱衣所から出てきたにオトモアイルーは飲んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになってしまった。

「な、な、な!」
「どうですか? 似合いませんか?」

頭にブルーの角が生えたヘアバンドと、腕と足が露出した青白いカラーが特徴的なキリンの装備に身を包んだが腕を広げてオトモアイルーの前でくるりと回った。
腰の動きに合わせて揺れるショーツを隠す布が破廉恥だった。

「だ、ダメですにゃ! 反対ですにゃ!」
「ど、どうしてですか? おかしいですか?」
「お、お、おかし……くはないですにゃ! とってもお似合いですにゃ! で、でもそれはダメですにゃ!」

慌てるオトモアイルーはの足元をちょろちょろと動いた。
オトモアイルーの珍しい反応には困惑しつつも気に入っているのか脱ぐ気配がない。

「とっても涼しくて動きやすいですよ?」
「そういう問題じゃ無いですにゃ!」
「ふむぅ……なら何が問題なんですか?」

オトモアイルーを抱っこして「貴方のもありますよ?」とベッドルームまで歩きオトモアイルー用のクローゼットを開けた。
自分のよりも多いのではないかと思うほど、その中には装備がぎっしり詰められていた。
ハンガーにかかったら一着を手に取り「ね? お揃いです」と笑うとオトモアイルーは「にゃー!」と叫んだ。

「ご主人様は何も分かってないですにゃ!」
「……まったく今日はどうしたというんですか?」
「そ、そんな露出が多い装備なんて着たら熱で頭が沸騰しているクソ馬鹿な男ハンターに狩られてしまいますにゃ!」

「キリン装備被害者の会があるぐらいですにゃ!」と興奮するオトモアイルーには笑った。

「そんな無謀な人はいませんよ」
「で、でも!」
「私には巷で有名な心強いナイトが付いているじゃ無いですか」

はゆっくりとオトモアイルーを下ろすと、お揃いの角がついたヘアバンドをオトモアイルーにつけてあげた。

「本物のキリンさんのように強いナイトさんの出来上がりです。さぁ行きましょう!」
「ご、ご主人様〜!」

引きずられるようにマイハウスから出たオトモアイルーの苦難は続く。

▼ イルミ(ハンターハンター)

「あづーい」と言いながら情報屋を営むは嘆いていた。
節約と称してエアコンはつけずに原始的な扇風機と団扇を仰ぎながら椅子に凭れ掛かった。
仕事の来客があればクーラーを稼働させるが一人で居る時は極力この生活を続けている。
だるそうな手でマウスを動かし、今日の最高気温を調べてまた「あづーい」と天井を見上げる。

カランカランとベルが鳴る。
の目がすぐにドアへと向けられ、背筋を伸ばして椅子に座りなおす。

「うわっ何此処……暑くない?」

入って早々文句を言う客には顔をしかめた。

「……そりゃ夏ですから」
「エアコンは?」
「客が来たら付ける」
「オレ客なんだけど」
「どう見たって冷やかしでしょ」

涼しい顔をしているイルミを見ながら「用が無いなら帰った帰った」と手を振るが、イルミは帰るどころかの向かいに置かれた椅子に腰掛けた。

「もう一度言うけどオレ客だから」
「情報収集ならミルキ君に頼め良いでしょ。あっちの方がハッキングセンスあるんだからさ」
にしか頼めないから此処に来たんだろ」
「……何それ。とりあえず聞くだけ聞いてあげるから、はい前払い300万ジェニーね」

は団扇を仰ぎながら片手をイルミに差し出した。
その手を見た後イルミはを見る。

「それこそ何それなんだけど。他の人間からも取ってるの?」
「天下のゾルディック家のご長男様にかかれば300万なんて安いもんでしょ? 持ってるところからボッタクる。賢いと思わない?」
「それ普通本人に言う? まぁそれで知れるんなら安いもんだけど。いつもの口座に請求しておいて」
「まいどあり」

輝くブラックカードをイルミから受け取ったはなかなか稼働しないエアコンの冷房ボタンを押した。
ガガガと嫌な音を立てながらエアコンの羽がガタガタ動き始めた。
それを見ながらイルミは「あれちゃんと動くの? 動き方おかしいんだけど」と少しだけ眉間に皺を作った。
キーボードを忙しなく叩きながら「去年は現役バリバリだったから今年もまだまだイケるでしょ」と呑気だった。
には決して顧客がいないわけじゃ無い。
良心的な金額で知りたい情報を的確に調べてくれるは業界では有名だ。
金だってあるのに身の回りの備品には一切金をかけようとしないがイルミにとっては不思議だった。

「で、ゾルディックさんは何を調べて欲しいんですか」
「その”ゾルディックさん”ってちょっとキモいんだけど」
「エアコン切ろうかなー」
「オレは良いけどまた暑くなるのはだよ? それにエアコンって稼働と停止の時が一番電力食うんじゃないの?」
「さ、何を調べて欲しいんですか?」

は口元をヒクつかせながらカードをイルミに返した。

「あのエアコンの修理代」
「……は?」

パソコンに依頼内容を打ち込むの手が止まった。

「だからあの今にも壊れそうなエアコンの修理代。いや、新品の方が良いかな。うん。そうしよう」
「えぇっと……」
「今出てる最新機器のエアコンと取り付け工賃。それ教えて。あ、取り付け日も。オレ見に来るから」
「ちょっとちょっと、どういうこと?」

いまいち依頼の内容が掴めないはイルミを見ながら怪訝な表情を見せる。
腕を組んみながらイルミが「早くして」と圧力をかける。
イルミの口座に請求をかけてしまった以上の目の前に座るのは客だ。
納得いかない表情でキーボードを叩き、つい先日見ていたエアコンの商品ページを印刷した。
足元においたプリンターがけたたましい音を立てながら一枚の紙を吐き出した。

「こ、こちらです。ざっと見積もって31万4980ジェニーで最短で来週取り付けに来てくれるものでございます」
「ふーん」
「ちなみに下取り有りで大特価!」

イルミはから受け取った紙をみながら「これじゃないでしょ」と言う。
の肩が一瞬跳ねた。

「お気に入りボタン押そうとしたけど金額見て止めたやつがあるでしょ」
「……ちょっと待て! 何でそれをイルミが知ってるの!?」
「ウチには優秀なPCオタクが居るから。遊び用のPCでももう少しセキュリティ高めたほうが良いよってミルキが言ってたよ」
「人のネットサーフィン用のパソコン勝手に見ないでよ!」
「つい、ね。ハハ。さぁ早く本命を印刷しなよ」
「わ、分かったわよ! 今後二度とイルミに言われても見ないでってミルキ君に言っとかなきゃ……」

金額を見て止めた商品ページを開いて印刷ボタンをクリックする。
ガタガタ響くプリンターから印刷した紙を取り「やっぱりただの冷やかしだったじゃん」と言いながらイルミに紙を渡した。
「冷やかしじゃないから」と言うイルミはその紙を受け取った後、携帯を取り出して誰かに向かって話し始めた。

「もしもしオレ。うん。確信取れたから頼んどいて。そう、最短で。うん、オレの口座からで良いから。よろしく」

手短に話しを終えたイルミは立ちあがった。
逃がさんとばかりにも立ちあがってイルミの腕を掴んだ。

「イルミ! 待ちなさい!」
「何? オレこの後仕事入ってるんだけど」
「今の電話……執事さん?」
「うん。が本当に欲しいのがどれか分からなかったから教えてもらいに来たんだよ。ね? 客だろ?」
「そういうの客って言わないから! あんた何しに来たのよ!」

戸惑いを隠せないとは反対にイルミはキョトンとした顔で首を傾げた。

「何って、冷やしに。此処暑いんだもん」
「余計なお世話だから! どうするのよ! 取り付け日に外の仕事入ったら!」
「だからオレが見に来るって言っただろ? 人の話聞いてた?」

「じゃ、また3日後に来るから。それまで干からびて死なないでね」とイルミは手を振って出て行った。
取り残されたは脱力して椅子に座るとガタガタ動いているエアコンを見上げた。
中古で買ったエアコンからは設定温度以上の生ぬる時風が出ていた。

▼ 竜・雨宮・北乃(哭きの竜)

梅雨が去った後は決まって暑い。
どこもかしこも人だらけの新宿はヒートアイランド化していた。

そんな中、北乃と雨宮はに呼ばれて馴染みの雀荘で本人が到着するのを待っていた。
しかし待てど30分、一向にが来る気配が無い。

「いつまで待たせるのよ。私、待たせるのは良いけど待つのは嫌いなのよね」
「それを俺に言った所でが来るわけじゃ無いぞ」

クーラーの効いた室内で北乃がレースで出来た扇子を扇げば雨宮は興味深そうに顔を寄せながら「それ、意味があるのか?」と問う。
パチンと閉じた扇子で雨宮の頭を軽く叩いた所で、来客を知らすベルが店内に響いた。
咄嗟に二人がドアの方に顔を向けるとご本人の登場だった。

「お待たせしました!」

いつもより派手な、どこで買ったか知らないハイビスカス柄のシャツを着たが店に顔を出した。
その後に無理やりに腕を引かれて竜が入ってきた。
その竜の格好に思わず二人はむせ込んだ。

「ちょ、っちょっと……!」
「竜貴様! ふざけてるのか!?」
「いやぁ準備に戸惑ってしまって……遅れてごめんなさい。あ、先にはいこれ」

は笑いながら手に持っていた麦わら帽子を二人にかぶせた。
急な出来事でついていけない二人だったが、先に口を開いたのは北乃だった。

「その……どういう事かしら? どうして竜がその、浮き輪なんか持ってるのかしら?」
「いやぁ最近暑いじゃないですか! なのでこれから海に行きましょうってお誘いです! ほら! 竜もこんなにおめかしして行きたいオーラを出しているじゃ無いですか!」
「……貴女が無理やり着せたんでしょどうせ」
「な、な、何故俺が竜と海に行かねばならんのだ!」

いつもと違う派手なシャツに身を包んだ竜は無言で煙草の煙を吐き出した。
大方に無理やり持たされたであろう浮き輪をもつ姿はとても”哭きの竜”と呼ばれる伝説の雀士には見えなかった。
同情の目を竜に向けながら「この面子で海なんて嫌よ。いろいろ目立つわ」と言う北乃にが「それが見てるとだんだん馴染んでくるんですよ!」と力説する。

「この柄だって! 馴染んでくるんですよ不思議と! ほら! 竜なんてどこからどうみてもサーファーそのものです! あ、ちなみに二人の分も買ってあるんでみんなお揃いですよ!」
「私たちをそのヘンテコ集団に混ぜるの止めてもらえるかしら?」
「ヘンテコじゃないです! 夏を楽しむ若者です! それにもう5人乗りのレンタカー借りてきちゃいました」
「運転は誰がするのよ?」
「雨宮さんです!」
「俺が!?」
「一番安全運転っぽいからです! 竜とマミさんははすぐ飛ばしそうだし、みゆきさんは高速道路は怖いって。だからこの中で適任なのは雨宮さんだと思います!」

の珍しい勢いに押されて雨宮「ぐぬぬ!」と漏らしながらも眼鏡を直しながら「俺は行かないからな!」と首を縦に振ろうとはしなかった。
着せ替え人形よろしく状態の竜を見た後北乃は「私焼けるの嫌なのよね」とやんわり断るとの目が光る。

「大丈夫です! そう言うと思ってパラソルも借りてありますし、水着も日焼け止めも用意してありますから! 紫外線対策バッチリです!」
「い、いつにも増して圧が凄いわね……」
「それぐらい私はみんなと海に行きたいんです! だから行きましょう! 行かない理由なんて無いですよね?! ね!?」

北乃に詰め寄るの横で竜が小さく「諦めなよ」と零す。
天からのお告げかと思いきや竜の次の言葉は北乃と雨宮の顔色を変えるには十分だった。

「行かないと……首を縦に降るまで追いかけてくる」

その言葉を聞いて北乃と雨宮は渋々首を縦に振った。


2020.09.17 UP
2021.08.16 加筆修正