コスプレでロン!

初局

事の発端は妖艶なお姉様女流雀士、北乃マミの発言だった。

「もっとお店に貢献したいと思わない?」
「……な、なんですか突然」

閉店後の掃除を行っているに北乃が突然切り出した。

「貴女もだいぶこの店に馴染んできた頃だし、もっとこう、違った戦略をしてみたらどうって話よ」
「違った……戦略……ですか?」
「そうよ。ちょっとこっちに来きなさい」
「は、はぁ」

首を傾げならソファに座る北乃の前にが立つ。
不安そうな表情を浮かべるに北乃は煙草を燻らせながら真っ黒の袋を押し付けた。
困惑するは北乃と押し付けられた袋を見比べながらどうしていいか分からず眉を寄せた。

「新しい制服よ」
「今度からこれを着るんですか?」
「そうよ」

北乃は「とりあえず着てみて」と言葉で背中を押すが、不本意なのだろうかはなかなか着替えに行こうとしない。
鋭い眼光で北乃がを睨むと、小さな肩が跳ねる。

「わ、分かりました。着替えてきます」

結局は渋々と言った感じで着替えに行った。
マスターは苦笑いを浮かべながら「あんまりいじめないでやってくれよ」と言うが、北乃は意地悪な笑みを浮かべながら「可愛い妹を苛めていいのは姉の特権よ」と返した。
数分後、更衣室からの叫び声が響き渡る。

「マ、マミさぁああん……!」

ドアから顔だけを覗かせたその顔は赤く、オロオロとしながら北乃の名前を何度も呼ぶ。
その事は予想していたようで北乃は面倒くさそうに髪の毛を掻き上げながらゆっくりと立ち上がり、更衣室へと足を向ける。
腕を組みながら涙目のを見下ろした。
そして、どうしたのか問えば、は「こ、こんなの着れませんよぉ」と更に顔を赤らめた。

「感謝サービスよ。それぐらいやってやりなさいよ」
「む、無理ですよぉお……! 私はマミさんみたいなボンキュッボンじゃありませんもん……!」
「五月蝿いわよ。さっさと出てこないと次はもっとドギツイのを持ってくるわよ」
「そ、そんなぁあ!」

涙目で訴えるが北乃には一切効かず、逆に冷たい目がにさっさと着替えろと命じる。
根負けしたはゆっくりとドアを閉めた。


2013.06.30 UP
2018.07.25 加筆修正
2019.09.17 加筆修正
2021.08.23 加筆修正