コスプレでロン!

バニーガールでロン!

そろそろコスプレのネタも尽きはじめるだろうと踏んでいたはそろそろこの文化が廃れてると思っていたが、予想は斜めを上を行っていた。
"毎週水曜日は看板娘がコスプレ衣装でお出迎え"は予想以上に広がっており、昼下がりにお店の買い出しを行っているとすれ違った客が話しかけてくるようになった。
自分の知らない所で名前が広まっていることに純粋に喜べないで居るは先に来店していた北乃を捕まえて事情を話した。

「そんなの知ってるに決まっているじゃない」
「えぇ!? な、なんかヤバくないですか!? ウチそういうお店じゃありませんよ!」
「別に良いじゃない。売上あがってマスターは嬉しい。貴女も自給が上がって嬉しい。お客はお触りが出来ればさらに嬉しいわね」
「なっ!な、ななな何言ってるんですか!お触りなんてあるわけないじゃないですかぁ!」

北乃爆弾発言には顔を赤くしながら声を上げるが、北乃は我関せずで衣装が入った紙袋を押し付けて背中を押した。

*****

その日、雀荘内に衝撃が走った。
頭からチョコンと伸びた黒い耳に、身体のラインがはっきりと表れるウサギをモチーフにしたと思われるレオタード。
そこから伸びる足は黒い網タイツで覆われている。
高いピンヒールが店内を歩けばたちまち周りの客たちの喉が鳴る。
お尻つけた白い小さな尻尾を無数の狼達が舌なめずりをしながら狙う。
流石のマスターもその過激なサービス精神っぷりに心配の色を浮かべたが北乃が監視している旨を聞いてキッチンの方へと下がっていった。
それでも心のどこかでやはり落ち着かないのか、フードの注文が入るとき以外はカウンターに出ての動向を見守っていた。

ちゃん今日はサービス精神旺盛だねぇ。おじさんも元気になっちゃうよ」
「元気になるのは良いですけどお触りは厳禁ですからね」
「はっはー! 参ったねこりゃ!」

最初は文句を垂れてはいたものの、いざ仕事となると常連客をうまくあしらう姿は流石と言える。
手を伸ばしてくる客にはやんわりと「別料金ですよ」と笑顔で返しながら、北乃の横に腰掛けた。
お疲れの言葉をかける前に緊張がほぐれたのかいつものふにゃふにゃしたに戻り、恥ずかしそうに俯いのには流石の北乃も驚いた。

「うぅう……やっぱり恥ずかしいです……」
「今更何言ってんのよ。あんな堂々とセクハラおやじの言葉をかわすなんてそうそう出来ないわよ」

煙草の煙を思い切りはき出した北乃は「そういえば」と切り出した。

「先週の夜は楽しめたかしら?」
「は? 先週……? 何かありましたっけ?」
「先週の水曜日の夜、サングラスをかけた赤紫色のシャツを着た男が男物のジャケットを羽織った女子高生をホテルに連れ込んだ所を見てるんだけど……貴女と竜で間違いなさそうね?」
「!」
「普通女子高生の格好した子がホテルに入れる訳無いでしょ。あのホテル私の知り合いが経営してるのよ。どう? 楽しめたのかしら?」

北乃の言葉を聞くや否やはまるでお腹を空かせた金魚のように口をパクパクとさせながら目を潤ませて首より上を真っ赤にさせた。
予想以上の反応をしてくれるに面白くなってわざとらしく「激しかった?」なんて聞けば、顔を覆って震えだす始末。
まるで本当にウサギのようで北乃の顔から笑みが離れなくなりじりじりと座る距離を詰め、の耳元に唇を寄せて「何回鳴かされたの?」なんて聞いてみる。

「マ、マミさん意地悪です!!!」
「あら?私は最初から意地悪な女よ?」
「ぐぬぬ……! マ、マミさんのばかぁあ!!! もう知らないんだからね!!!」

頬を膨らませながらプリプリと怒る一匹のウサギの怒涛の叫びが店内に響き、客たちが振り返る。
噂の的となっている竜が迎えに来るまで後数時間。

今日も通常運転で営業中。


2013.12.27 UP
2018.07.27 加筆修正
2019.09.17 加筆修正
2021.08.23 加筆修正